男は家から出ていった
男は家から出て行った
小さな棍棒と袋を持って
遥かな道を
遥かな道を
歩きとおしてゆくために。
彼はまっすぐ前へ進む。
いつも 前しか見ていない
眠らず、飲まず、
飲まず、眠らず、
眠らず、飲まず、食いもせず。
そんなある日の朝焼けに
彼は暗い森に入った
それ以来、
それ以来、
それ以来 彼は姿を消した
けれどもし いかにしてか かの人に
出会うことがあったなら、
その時は はやく、
その時は はやく、
はやく私たちに教えてほしい。
挿絵 河原朝生